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2009年11月28日 (土)

日航は本当に必要なのか?

 政府主導で経営再建中の日本航空。深刻な経営不振に直面する中、コスト増の一因とされる社員の待遇や企業年金などの課題が浮き彫りになる一方、国内外の不採算路線の撤退・減便を相次いで打ち出してきた。ただ、利用客減に苦しむ日本の地方空港にとって、日航の撤退は存続の根幹を揺るがす一大事にもなりかねない。「ナショナル・フラッグ・キャリア(国を代表する航空会社)」として不採算路線を背負い続ける日航を「血税」で支える必要性はどの程度あるのか。日航の存在意義を問い直す声が高まっている。

 

日航の〝自負〟

 「このような事態に至った責任を痛感している」

 今月13日に発表された日航の平成21年9月中間連結決算。本業のもうけを示す営業損益が957億円の赤字、最終赤字も1312億円に上ることが明らかになり、西松遥社長は自らの責任問題に言及、再建計画策定後の辞任も示唆した。

 経営再建の成り行きが注目を集める状況で発表された深刻な経営不振。世界的な景気悪化や新型インフルエンザ流行を背景にした旅客減、航空料金の低迷など、さまざまな要因を背景に、改めて厳しい実態が突きつけられた。

 「国民の交通の『足』を守るため、大きな社会的責任があると自覚している」。日航広報は、自社の社会的役割をこう説明する。国内の不採算路線を背負い、公共交通を支えてきたという自負心がにじむ。

 一方で、同社は22年までに、国際線13路線、国内線15路線の計28路線から撤退する方針を明らかにしている。同社は「路線撤退や運休は、断腸の思いで進めている。第一に会社が生き残らなければ、責任を果たせない」と語る。

 今年10月、前原誠司国土交通相直轄の専門家チーム「JAL再生タスクフォース」は国内外45路線の廃止を提案した。しかし、政府方針のぶれや、債権放棄をめぐる銀行団の反発でチームは解散、提案は白紙に戻った。ただ、同規模の“大ナタ”が振るわれる可能性を指摘する声は根強い。

 

「こんなに悪いとは…」

 国内に100カ所近くある地方空港。供給過多の状況で、平均搭乗率30%ほどの赤字路線を抱えるケースも少なくない。

 日航は関連会社を含めると、全国97空港のうち60空港、計158路線に就航している。

 今年1月、日航は福島空港から全面撤退した。福島県の幹部は「経営状態がそこまで悪いと認識していなかった」と語る。「何度も慰留に努めたが、厳しい状況を理解し、非常に残念だが、受け止めざるを得なかった」。昨年7月に突然、撤退を伝えられた衝撃を振り返りながら、幹部は声を落とした。

 21年度の上半期の同空港の利用者は約17万7000人。前年度同期比で40%減と大きく落ち込んだ。減少した約12万人の利用客は、JAL便を利用していた客数にほぼ匹敵する。20年度、空港施設利用料などの収入から、管理費などの支出を差し引いた収支は、単純計算で約3億5000万円の赤字。5年の開港以来、同様の状況が続いているという。

 県は「日航便にも、他の赤字路線を支えられる『東京路線』のようなドル箱はなかった」と認める。

 そんな中、近隣の仙台空港に加え、22年には茨城県に茨城空港が開港する予定だ。

 佐藤雄平・福島県知事は「いかに今の路線を使っていただくか、搭乗率を上げていくかが重要」と強調する。仙台、茨城両空港などとの位置関係に加え、ターゲットに観光客、大都市圏へのビジネスマンを据える空港の方向性などで重なる部分は多く、競争激化の懸念はぬぐえない。

 同県に住む男性(28)は「空港で発展が望めるならうれしい。でも、日航が去って、他もすべて撤退して、最後に何も残らないことだってあり得る。日航には残ってほしかった。空港が取り返しの付かない“負の遺産”になることが一番心配」と語る。

 

経営再建は“足元”から?

 今月25日、日航グループの社員が全国各地で街頭活動を行った。語呂を合わせ、毎月25日を「日航(ニッコー)の日」と位置づけ、都内の駅前などで、通勤客らに旅行キャンペーンなどを伝えるビラを配った。

 今年9月には、西松社長自らが赤い法被を着て街頭に立ち、クリアファイルやパンフレットなどが入った袋を配布。「経営再建を進めていくには、財務体質の強化と社員のモチベーションという両輪が必要」と話した。

 ある社員は、「『半官半民』といわれたままで終わるのを良しとしない声は、社内でも強い。小さなことから汗をかいて、地道に努力しないと、国民の理解は絶対に得られない」と語る。同社広報は「国民から見限られかねないという危機感が社内で膨らんでいる」と説明する。街頭に立った社員には若手も多く、休日や空き時間を利用して、手弁当で参加したという。

 ただ、こうした活動が国民の理解に繋がるかは未知数だ。

 都内に住む主婦(60)は「社員さんがボランティアでどれだけPRしても、企業年金の話とかが目立つと、白けてしまう」と肩をすくめる。神奈川県に住む無職の男性(69)も「私も一般企業で一生懸命働いて、下請け出向もして、65歳でやっと引退できた。国益を守る航空会社が必要だというけど、大所高所で言われてもわからない。政府も体質改善を厳重に『指導』して」と力をこめる。

 

「国民の理解」は得られるか…

 政治評論家の屋山太郎氏は、「30年前から『建て直し』の動きがあったのに、失敗を続けてきた。疑問だらけの経営再建を“国営事業”としてやるなんてとんでもない。郵貯・簡保の議論に続いて、日本を社会主義にするのか。日航はつぶすべきだ」と厳しい。さらに、「高い給与に、企業年金。ナショナル・フラッグ・キャリアとして、事業的に無理な不採算路線にわざわざ飛行機を飛ばしたことも含め、運輸行政も大間違いだった。再建に税金を使うことに、国民の理解が得られるわけがない」と語気を強めた。

 日航再建の動きをめぐっては、「同業他社」からも懸念の声があがっている。

 全日本空輸の伊東信一郎社長は今月10日の定例会見で、日航再建に絡み、「今後の航空行政で、企業間の公正公平な競争を確保してほしい。国際的にオープンスカイ(航空自由化)が進み、競争が激化する環境下で、(日本の航空会社が)いかに生き残るのかという観点を持ってほしい」と政府の“日航びいき”を牽制(けんせい)した。

「膿を出し切るべき」

 「飛行機が飛ばない空白の空港がない形にしたい」。日航支援策の検討をめぐり、前原国交相はこう語っていたが、国が日航に不採算路線の継続を求め続けるのは現実的に難しいだろうとの見方が一般的だ。

 航空評論家の秀島一生氏は、「国を代表する責任を持って、安全な運航を実現する社会的使命を持った交通機関は絶対に必要」と断言する。ただ、日航に30年勤務した経験を踏まえ、「航空利権をめぐる政・官との癒着や、労使の距離感をはじめ、日航の経営悪化には隠され続けてきた問題がある。膿を徹底的に出し切るべきだ」とも語る。

 今月24日、日本航空は政府に対し当面の資金繰り支援を要請し、日本政策投資銀行と融資枠約1千億円の融資契約を結んだと発表。当面の資金繰りにめどがついた。前原国交相は「日航の運航が止まれば利用者や企業の活動に重大な影響が出る」と認定した。

 しかし、経営再建が進まなければ、最終的な負担を国民が背負う可能性も出てくる。それだけに、再生へのかじ取りは慎重、かつ先を見据えた戦略性が求められる。

 

日本の「空」の行く末

 秀島氏は「日航存続の是非を感覚的に考えてはいけない。日本を代表する航空会社をつぶすことが、世界での信頼にどのような影響をもたらすか、真剣に向き合わなければならない」と分析。「安全性や営業力、海外のビジネスマンをバックアップしてきたネットワークや信頼など、日航が培ってきたものは非常に大きい。ナショナル・フラッグ・キャリアの位置づけと、日航の経営問題は切り離して考える必要がある」と指摘する。

(産経ニュース、http://sankei.jp.msn.com/economy/business/091128/biz0911281800008-n1.htm

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